101回目の夏の、最後の舞台の前に

 明日8月22日、全国高等学校野球選手権大会の決勝戦が行われる。対戦カードは、大阪府代表の履正社と石川県代表の星稜。どちらが勝っても初優勝ということだ。
 僕は断然、星稜を応援している。3月24日の記事でも書いているが、星稜高校は、軟式野球出身の選手が多く、彼らの中学時代から、雑誌などでその活躍を追っていたからである。
 

 以前にも書いたが、星稜のエース奥川と捕手の山瀬は石川県の宇ノ気中に在籍していたとき、全国中学校軟式野球大会で優勝しており、同じ年の全日本少年軟式野球大会で星稜中が優勝している。つまり、3年前に中学軟式の世界で日本一となったバッテリーと、同じく日本一に輝いた学校の主力が現在の星稜のメンバーである。強いことは当たり前なのかもしれないが、軟式出身の選手が高校で活躍することは昨今特に珍しくなったため、中学軟式野球の指導に携わった人間としては、軟式出身の選手は応援したくなる。明日の決勝で星稜が勝てば、星稜のほとんどの選手は中学、高校で日本一に輝くことになる。団体スポーツでこれはとてもすごいことではないかと思う。履正社は春に勝っているとは言え、侮れない相手である。気を引き締めて戦ってほしい。

 

 さて、星稜以外に、僕が今大会注目していた高校は、明石商業と仙台育英である。明石商業の狭間監督、仙台育英の須江監督は共に中学軟式の世界で日本一の経験がある方で、高校でどのようなチームづくりをするかを楽しみに見ていた。
 明石商業の狭間監督は、今大会でかなり有名になったと思う。感情をむき出しにしたガッツポーズと試合後のインタビューは注目を集めた。でも僕はやはり監督目線で見てしまうので、狭間監督の戦術に注目していた。特に驚いたのは、3回戦の宇部鴻城戦での3塁エンドランである。中学軟式の世界では常套手段であるが、高校でやるとは思ってもいなかった。カウントは2-3。投手は必ずストライクを取りにくるだろうし、バッターがゴロを転がすことができれば、確かに1点は入る。しかし、それでもリスクのある作戦である。あれを成功させることができたのは、監督と選手の信頼関係、それに勿論、練習があってのものだろう。また、同じ試合のサヨナラスクイズも、満塁で1ストライクの場面だった。どう考えても、明石商業に不利な局面だった。その場面でスクイズを成功させ、試合を決めるということがとんでもなくすごいことだ。
 明石商業は、その後の八戸学院光星戦も接戦をものにし、センバツ同様、ベスト4に進出したが、履正社に敗れた。この試合は見ていないので何とも言えないが、初回に2年生エースの中森がつかまったらしい。中森は、その恵まれた体格と球速から来年のドラフト候補と言われているが、僕の見る限り、球数も多く、球威がないように感じられる。また、八戸学院光星戦の後、「バッターが恐かった」みたいなことも言っていた。投手はこんな気持ちで投げていると厳しい。「打たれてなるものか」「絶対に抑えてやる」くらいの気持ちで投げないといけない。中森が更に成長するためにはメンタルの強化が必要かもしれない。
 明石商業は、明石市立の高校であるが、市の税金で設備を良くしているとの批判もある。だが、狭間監督がいたからこそのこの結果だと思う。今後も注目したいし、数年後に日本一になると思う。

 

 仙台育英は、敦賀気比との接戦をものにし、奥川が投げないであろうと言われた星稜戦は面白い試合になると思っていたが、結果は大敗だった。新聞等でも報道されていたように、あの試合は「奥川を休ませる」ということで星稜ナインが一つにまとまった結果だろうと思う。須江監督も、まだ高校での経験は浅いが、昨年度よりも確実にチーム力をアップさせている。今後に期待だ。

 

 明日の決勝戦、当然仕事があり、見ることはできないが、経過は見るつもりだ。頑張れ、星稜。中学軟式にゆかりにある選手が高校野球の場で活躍することが僕は嬉しい。