熊本城マラソン2020参加録 その2(出走前編)

 前夜の願い空しく、大会当日の朝も雨は降り続いていた。それは降水確率から連想される程の雨量ではなかったが、フルマラソンを走る上で良いコンディションではないことは明らかだった。

 

 当日は5時に起きた。新聞に目を通しながら、改めて天気を確認した。午前中の降水確率は100%。週間予報では50%〜90%をいったりきたりしていたが、前日に最悪の100%となった。
 ただ、救いは気温である。暖かい雨だった。しかし、朝を最高として徐々に下がっていくことを、このときの僕は知らなかった。
 5時半頃、妻が早起きして作ってくれたおにぎり、バナナ、そしてゼリーなどの朝食を食べ、6時過ぎに出発した。まだ夜が明けない中、やがて8ヶ月になる娘もチャイルドシートに乗せ、妻が送ってくれた。普段、明るい時間しか車に乗ることのない娘はキョロキョロと流れる景色を眺めていた。

 

 鶴屋付近で降ろしてもらった。時間は6時半過ぎだっただろうか。周囲にランナーと思しき人はそれほど見当たらなかった。朝方まで友人たちと過ごしたであろう若い男女のグループ数組とすれ違った。
 更衣所となる市役所駐車場が開くのは7時だったため、コンビニでトイレに行ったり、下通内を軽く歩いたりして過ごした。その間、アーケード内にはコーンが等間隔に置かれていた。後から知ったことだが、それはファンラン用のコースだった。
 7時少し前に更衣所前に移動した。既に多くの人が開所を待っていた。
 開所されると、人の塊が一斉に動き、駐車場に吸い込まれていった。最寄りのフロアである2階はすぐに埋まったため、僕は3階に向かった。
 駐車場内は、車を停める位置にブルーシートが敷かれていた。いつも大会に出るときは銀色のマットを持参するのだが、車で来ていないこともあり持ってこなかった。でも、そんなに長居するわけでもないので、ブルーシートでも十分だった。
 20分ほどゆっくりとストレッチをした後、更衣所を後にした。更衣所は僕が来たときよりも多くの人であふれ、ランナーの多くはゼッケンをつけたり、着替えたりしていた。
 更衣所を出た後、仮設トイレで2回目のトイレに行った。スタートまであと1時間ほど。もう1回はトイレに行く必要があるなと思った。この時間の仮設トイレは全く混んでいなかった。
 トイレを出た後、スタートブロックの方に向かった。もう既に数人のランナーが待機していた。このような光景を見ると、焦る気持ちも出てくるのだが、走っている間はトイレに行きたくないので、もう一度トイレに行っておこうと思い、様子を見ながら8時過ぎにブロックに入ろうと思った。
 雨は相変わらず降っていたが、弱い雨だった。傘をさすほどでもない弱い雨だ。このくらいの雨なら、さほど影響は出ないだろうと思った。
 8時までは大劇の軒下で過ごした。スタートブロックの様子を見ながら、雨をしのげる良い場所だと思った。
 8時になり、ゼリーをもう一度飲み、荷物を預けに向かった。多少混んでいたが、スムーズに預けることができた。その後、トイレに向かったが、先ほどよりもかなり混んでいた。30人くらいは並んでいたが、待ち時間は10分ほどだった。
 直前にトイレに行けたことで、準備は万端だと思った。スタートブロックは30分前に比べ、人が増えていたが、Bブロックということもあり、それほど影響はないだろうと思った。
 それからの時間は長く感じた。ただ待つのみである。前日に渡されたポンチョを着て、コロナウィルス対策のマスクも装着し、スタートを待った。Bブロックでマスクをしている人はほとんどいなかった。雨脚は徐々に強くなり、足下には水たまりが増えていった。 
 やがて、スタート地点の近くでセレモニーが始まり、市長の威勢の良い挨拶もあった。スタートの時間は刻一刻と迫っていた。