ウクライナ侵攻に思う

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。

 大国による他国への武力介入は久しく行われていなかっただけに、「まさか本当に事を起こすなんて」と思っている人が多いことだろう。僕もその一人だ。脅し合いだけで終わると思っていた。しかし、いとも簡単に攻撃は開始された。第二次世界大戦後、長らく続いていた国際情勢が決定的に変わってきた。今後、ますます世界は混迷の時代に入っていくであろう。

 思えば、イギリスのEU脱退、アメリカのパリ協定離脱(その後復帰したが)、ロシア及び中国の長期政権化など、ここ5年ほどの世界情勢の動きは不穏なものになってきていると感じていた。国際秩序からの脱退や、個人による長期政権は第一次及び第二次世界大戦戦間期と似ている。このような小さな変化が少しずつ積み重なって大きな事件へと発展していくのが歴史の流れである。今回のウクライナ侵攻も、おそらく短期間で終わると思うが、1938年のナチス・ドイツによるズデーテン地方編入の後、第二次世界大戦が起こったように、最悪の場合、第三次世界大戦へと発展する可能性がある。それはおそらく、アメリカの覇権にロシア・中国が挑戦するものになるだろう。そこに、北朝鮮、イランあたりも絡んでくるかもしれない。今のアメリカには、以前ほどの圧倒的な存在感はない。戦後長らく平和を享受してきた日本も試練の時代が来るかもしれない。

 

 さて、そもそも今回、ロシアがウクライナ侵攻を決断した理由として、プーチンは「NATOの不拡大確約を求めた提案をアメリカが退けたため」としている。ウクライナNATOの一員となっては、ロシアの安全保障が極めて危ういものであるということである。

 確かに、安全保障の観点から言えば、プーチンの言うこともわからなくもない。敵対する勢力が隣国にあれば脅威を感じるのは当然である。しかし、それはあくまでも口実で、ウクライナ侵攻はプーチンの構想の範囲内ではないかと思う。絶好の機会を与えただけに過ぎないと思う。

 また、NATOの目指しているものもわからない。勉強不足であるのは承知の上で書くが、NATOはそもそも冷戦期に発足した組織であり、ワルシャワ条約機構が解散したように、冷戦の終結と同時にその役目を終えなければならなかったはずである。現在も存続し、東方拡大している時点でロシアを刺激するのは自然な流れであり、今回の事態は、NATO(主にアメリカだろうが)自身が招いた事態だとも言えるのではないだろうか。

 

 人間は弱い生き物であるが故に強く見せようとする。軍隊を組織し、核兵器を保持し、国際軍事組織を発足させ、加盟する。強いということを誇示したい生き物だ。弱さを曝け出して「自分は強くない、だから、手を取り合って生きていこう」ということを世界中の誰もが言えるようになればいいのだが、それはかなり難しいことである。

 

 数日後、世界地図が変わるのをまた目撃することになるかもしれない。